愛知県の半島の先、言い方は悪いかもしれないが、どんづまりのような場所に、
ただ、そこに泊まるために訪れる価値のある旅館がある。
古い家が立ち並ぶ漁師町の中に突然現れる趣ある木造旅館。
それが「和味の宿 角上楼」。
訪れればまずはその迫力ある外観に驚かされる。
広々とした玄関に、木造にしては天井の高い建物、楼閣も備えている。
昭和初期の木造建築は風情たっぷり
創業は1926年(昭和元年)。
かつて、ここ渥美半島は、海運の要衝として発達して、財を成した金持ちたちが遊ぶための社交場として建てられたのがこの角上楼だった。
昭和33年までは遊郭でもあったのだという。
現在は当時の面影を残した、純和風旅館となっている。
玄関へと入ると、目に飛び込んでくるのは幅2mの大きな階段。
なんと欅の一枚板で出来ているのだそう。
古い日本家屋を訪れると、使うべきところに惜しみなくお金を掛けているのに感心させられるが、
ここ「角上楼」でもそんな日本家屋の贅沢さを目にすることが出来る。
しかも、階段も床もツヤツヤとしていて、古いながらもしっかりと手入れが行き届いて大事にされてきたのだということがよくわかる。
ベースは変わらず、進化は続ける
何度か訪れると分かるのだが、この旅館の特徴は、古い建物を使いながら常に進化を止めないことにあると言える。
例えば、玄関を上がってすぐのモダンなラウンジ。
ここもかつては帳場だったものが、2005年、現在のモダンなスタイルへと生まれ変わった。
チェックインの手続きはここで行うことになる。
どのタイプの客室に泊まろう?
客室は本館5部屋、新館雲上楼2部屋、翠上楼3部屋の計10部屋。
客間はそれぞれ異なった作りになっているが、日本ならではの旅館スタイルを楽しみたいなら本館の「松」か「竹」がオススメ。
それ以外の部屋はベッドスタイルでの就寝となる。
せっかくの旅館での滞在、のんびりと空間に浸りたいものだが、そんな時にオススメの場所が、本館2階のテラス。
旅館の中でも特に古き良き日本家屋を味わうことが出来る空間になっている。
大きな板を使った床の感触を楽しみながら、窓辺に置かれた椅子でのんびりくつろぎたい。
地元の漁港で揚がった魚を和食の技で…
食事は食事処で頂く。
2016年に改装されたカウンター席が10席、サロンスペースが14席、個室が8席の計22席。
一階サロン及びカウンターは中庭に向かって座席が置かれているため、庭を眺めながら食事ができる。
夕暮れの時間帯には庭がライトアップされ、建物と庭園との美しい風景を眺めながら食事ができるので、その時間帯が狙い目。
夕食は、宿の主人が毎日、自ら地元の市場で仕入れた、新鮮な魚介の料理を出してくれる。
もっともスタンダードなコースで10皿。
海の幸が豊富な遠州灘の宿らしく、使っている食材は岩カキ、大アサリ、ハモやヒラメなど。
また、魚介類だけでなく地元のブランドであるあつみ牛や渥美豚などもうまい。
眺望抜群のお風呂はミネラルウォーターを使用
お風呂は宿泊客ならば、別館の大浴場を使用できる。
露天風呂付きの大浴場は、高台にあり、風呂から田園地帯ののどかな風景や遠く三河湾を望むことができる。
お湯は約150メートルの深さからくみ上げる天竜川の伏流水を使用。
温泉ではないのだが、肌触りがやわらかく、気持ちが良い。
古き良き日本の昭和の薫りを味わうことが出来る宿である。