島根県の東出雲の山間にある畑集落。
全22戸の小さな集落ですが、この静かな農村が一年に一度華やぐ時期が有ります。
それが、ほし柿の季節。
そもそもほし柿って?
ほし柿というのは日本独特の食べ物で、渋柿を乾燥させることによって渋を抜き、保存食として食べるというものです。
渋の正体はタンニンなのですが、乾燥することによりタンニンが果実の中に発生したホルムアルデヒドと結合し、
渋みを感じなくなるというのが原理のようです。
渋柿は普通の柿より甘みが強いそうで、普通の柿をほし柿にしてもそれほど甘くならないそうです。
ちなみに、表面の白い粉は、果実の糖分が固まったものなので、安心して大丈夫ですよ。
ほし柿の里の秋は忙しい
畑集落は標高およそ150〜200m。起伏の激しい山間の集落です。
集落は全部で22戸。そのうち19戸がほし柿農家ですが、お米との兼業です。
ほし柿づくりに使っているのは西条柿。
広島県の辺りが原産の品種で、大きさは12〜13cmほど。
少し大振りな渋柿です。
これが収穫できるようになるのが例年10月の末から。
ここから1ヶ月農家の人達は時間との勝負です。
柿が熟しきってしまう前に次々と収穫して、ほし柿に仕上げていかなくてはならないのです。
(ちなみに完熟の西条柿は渋が抜けてめちゃくちゃ甘いです。至福の味)
私もテレビ番組の取材で訪れたことがありますが、朝6時位から作業を初めて、20時位までやっていたように思います。
一つ一つ丁寧に でも素早く
収穫は手作業で行われます。
ハサミで切っていくのですが、この時のポイントがヘタの部分をT字状に切ること。
つまり果実の先の枝は落としてしまうということ。
こうすることでT字の部分が干すための糸を引っ掛けやすくなるからです。
続いてほし柿小屋に運んだら、硬いヘタの周りを機械のカッターで削り、手作業で皮を向いていきます。
これが皆さんむちゃくちゃ速い。
柿が重いので収穫して小屋まで運ぶのは男性が主で、皮むきは女性たちがやるのが多いのですが、皆さん口も動くが手も動く。
10秒かからずに1つ剥き終わってしまうんです。
飴色のカーテンが太陽の光を受けて輝く
皮を向いたらいよいよ干す作業。
ほし柿小屋は2階建てになっていて、柿は2階部分に干します。
2階の窓は一面のガラス張りで、フルオープン出来るようになっています。
晴れている日は窓を空けて天日と北風で乾燥させ、雨の日は窓を締め、小屋の中でストーブを焚くのです。
晴れた日のほし柿小屋の風景はとても美しいです。
陽の光を浴びたほし柿は明るいオレンジに輝き、乾燥が進むと深い飴色に変化していきます。
秋が深まり、冬が近くなると出荷が進み、小屋のほし柿も減っていきますので、
小屋いっぱいにほし柿が吊るされている風景を見たいのなら11月上旬から中旬がおすすめです。
一つの房が10個で、小屋全体で2〜3万個のほし柿が吊るされるさまは圧巻です。
マナーを守って 見学・写真を撮ろう
柿農家の人たちはみなさんいい人ばかりなので、一声かければ、作業の様子や小屋の中からの写真も撮らせてくれると思います。
でも、全ての柿は食べ物でかつ商品ですので、触ったりしないようにしてください。
また農家の方の作業を邪魔しないようにお願いします。
訪れるときは、集落の中には駐車場がありません。
しかも集落の中は道が狭く、農作業用のトラックが行き来します。
集落を散策する時は、集落の一番奥にある出雲金刀比羅宮に車を停めて歩くようにしてください。
集落の奥の高台にあり、15台ほど停められます。
その後の散策も下ってくることになるので楽だと思います。
ほし柿が食べられるようになるのは12月から
ほし柿が店頭に並ぶのは、例年12月からです。
その時期に訪れたなら、ぜひお土産に購入して見てください。
まるでバニラのような香り高い甘さと、ネットリとした口触りは他のドライフルーツにはない風味だと思います。
島根県内ならば島根県農業協同組合(島根県松江市西川津町1635−2)で購入できます。
一つおよそ300円から、大きさによって値段が変わってきます。
ちょっとお高いですが、それだけの価値は有ります。