苦労するだけの価値がある場所
上高地は標高約1500mに位置します。
北アルプス・穂高連峰の麓、梓川の川沿いにおよそ10kmに渡って広がる平野です。
川沿いを歩けば、変化に富んだ美しい山岳風景を見ることができます。
特に河童橋の上から穂高連峰のパノラマは圧倒的。
驚くほど山が近く見え、登山をしている人たちの姿も見えるほど。
夕方や朝の人が少なくなった時間は、特別な気分に浸れるので、可能であれば一泊するのがおすすめです。
山奥のためにアクセスは大変ですが、この絶景はそれに見合うだけの価値があります。
アクセスは?
上高地は、自然保護のために通年でマイカー規制が行われています。
そのために、アクセスはバスかタクシーだけ。
タクシーであれば松本駅から約1時間半、定額16,000円です。
4人まで乗れるので、1人4,000円で行けます。
バスでしたら、楽なのは松本バスターミナルからの直行便です。
時間は約1時間半。片道2,450円。往復4,550円です。
バスはハイシーズンには、同じ時間の便を増発してくれるので安心です。
ただ、バスやタクシーは楽ですが、ちょっと面白みが少ない。
というわけで、ローカル線とバスを乗り継ぐのもおすすめです。
特に小さい子供連れの場合、1時間半のバスは、飽きてしまったら地獄と化すので、途中休憩を入れられる電車&バスが良いのではないでしょうか。
あとは、レンタカーや自家用車で、最寄りの沢渡(さわんど)駐車場まで行き、そこからバスかタクシーという手もあります。
電車とバスを乗り継ぐのなら
まずは松本駅の7番線から松本電鉄の新島々行きに乗ります。およそ30分。
新島々からはバスに乗り換え。およそ1時間ほどです。
かなりの曲がり道を行くことになります。
バスが新釜トンネルを通り抜ければ、上高地に到着。
上高地は、まさに陸の孤島と呼ぶのにふさわしく、この新釜トンネル以外では、歩いて徳本峠(とくごうとうげ)を越えるしかありません。
大正池から歩くのがオススメ
バスが上高地へと入っていくと、左手に大きな池と荒々しい姿の山が見えてきます。
大正池と焼岳です。
この段階でバスの乗客からは、「おおー!」という感嘆の声が漏れます。
すぐにバスは大正池のバス停に到着するので、ここで下車しましょう。
ここから河童橋までおよそ4km。平坦な道なので初心者でも安心のコースです。
大正池 有名な立ち枯れの木は減少中…
バス停のすぐ脇を池の方に降りていく階段がありますので、まずは大正池へ。
大正池は、大正5年(1915)に焼岳の噴火によって、川がせき止められ生まれました。
そのため、木がそのまま池の中で立ち枯れていて、その幻想的な風景で有名です。
ただ、立ち枯れの木も15年ほど前に比べると明らかに減少してきており、この幻想的な風景もそれほど長くは楽しめないだろうと思われます。
池の向こう側には標高2,455mの焼岳がそびえています。
活火山で、晴れていれば山頂から細く噴煙を上げているのが見えると思います。
大正池の水は、驚くほど透き通っていて感激すること間違いなし。
大正池から田代池へ 多彩な風景を楽しめる
大正池からは、梓川の上流に向かって遊歩道が整備されています。
この区間は、短い距離で様々な風景を楽しめるのが特徴です。
平坦で、一部分がれ場(石が散乱する荒れた路面)があるので、少しだけ注意が必要です。
歩くルートとしては、まず木道。
渓流が水鏡のようになって美しい風景を見ることができます。
続いて短い距離のがれ場を通り抜け、田代湿原沿いの遊歩道へと至ります。
湿原には白樺が立ち並び、花も多く咲いています。
スタートからおよそ1kmで田代湿原を通り抜け、田代池に到着。
湿原の端に設置された展望デッキからは、穂高連峰が一望できます。
写真では、残念ながら雲に隠れてしまっていますが…
展望デッキを右に曲がり50mほど歩けば、田代池へ。
かつては深さ5mほどあったそうですが、今は土砂が堆積して10cm程の深さになっています。
田代池から田代橋へ 川沿いが気持ちいい
さて、田代池からは林間コースと梓川コースに別れます。
せっかくの梓川沿いの遊歩道なので、川沿いコースがおすすめです。
大正池のあたりとは違い、流れが早く、深く、迫力のある流れを眺めながら歩いていくことができます。
ここまでくれば、中間地点の田代橋まですぐ。
田代橋のたもとにはトイレもあります。
田代橋から河童橋へ 左岸がおすすめ
田代橋からは、川の両岸に遊歩道が設けられています。
どちらを歩くかが問題です。
右岸には、上高地を「発見」したウォルター・ウェストンの記念碑があるのと、日帰り入浴ができる温泉旅館がいくつかあります。
でも、個人的には左岸側をいくのがおすすめ。
というのは、左岸の方が穂高連峰を眺めながら歩いていくことが出来るから。
右岸に行ってしまうと。下の写真手前の林の中を歩くことになります。
河童橋 完璧な場所に位置している吊橋
さらに梓川沿いを歩いて行けば、河童橋に到着。
ここは橋を挟んで両岸にホテルが立ち並ぶエリアです。
お土産物屋や、食堂もいくつかあります。
河童橋の上は絶好の写真スポット。
上流を向けば穂高連峰が視界一面に広がります。
山が驚くほど近く見え、山頂近くで登山をしている人たちの豆粒のような姿も見えるほど。
ちょっと登れば山頂まで行けてしまうのでは、と勘違いしてしまうほどです。
一方、下流を向けば焼岳が見えます。
昔の人も良く分かっていたのでしょう。まさに完璧な場所に掛けられた橋です。
河童橋から明神池へ 少し歩けば絶景スポットが
バスツアー等の場合、大正池で降りることができずに終点の上高地バスターミナルまで連れて行かれてしまう可能性があります。
その場合は、河童橋の風景を楽しんだあと、明神池方面に足を伸ばすのがおすすめです。
とは言え、明神池まではおよそ4kmあり、1時間以上かかってしまうので、どこまで行くかは自分のスケジュールとの相談。
この時のおすすめは、川沿いの右岸。
いくつか小川を越え、河童橋から10分ほど歩けば、絶景スポットがあります。
岳沢湿原 立ち枯れの木が立ち並ぶ
湿原に掛けられた木道を歩いていくと、右手に小さな展望デッキが設けられています。
岳沢湿原です。
ここからは、小さな池と立ち枯れの木々の風景を楽しむことができます。
大正池には10本ほどしか残っていない立ち枯れの木も、この湿原には数多く残っていて幻想的な風景を楽しめます。
さらに、もう5分ほど行けば、湿原の終点に到着。
ここからも、絵になる風景が見られます。
ここまでなら気軽に来られるので、時間がない人でも安心です。
明神池へ 野生のサルに出会えるかも
さらに明神池を目指すならば、少し起伏のある道を歩いて行くことになります。
途中でサルの群れに出くわす可能性もあります。
かなり人間に慣れているようなので、引っかかれたりしないように注意が必要です。
視線を合わさない、餌を与えないなどの注意が必要です。
明神池までは、河童橋からおよそ70分。
池は穂高神社奥院の中にあるので、入場料(大人300円 小学生100円)が必要です。
どんな服装がオススメ?
散策するつもりならば、靴はスニーカーかトレッキングシューズ。
服は、街にいるより1枚多く持っていくイメージです。
夏ならば、長袖、長ズボン。春、秋ならばフリースなどの防寒着。
山の天気は変わりやすいので、雨具は必須です。
上高地の魅力 ダイナミックさと繊細さの共存
上高地の魅力は、ヨーロッパアルプスのようなダイナミックな風景と、その麓に広がる繊細な風景の共存です。
一つの場所で、これだけ多彩な風景を見ることが出来る場所はなかなかないと思います。
ぜひ訪れてみてほしいと思います。
個人的には、機会があれば、次は閉山直前の紅葉の時期に行ってみたいです。
唐松が黄金色に輝き、人の数も少なく、とても静かで美しい上高地を楽しめるそうです。