三面川の鮭漁はひと味ちがう
新潟県村上市。
町家づくりの家並みや、ひな祭りで知られる町ですが、秋の鮭漁も見逃せない風景の一つです。
10月に入り、日本海からの冷たい北風が吹いてくる季節になると、村上を流れる三面川には成長した鮭が戻ってきます。
村上の人たちにとって、鮭は「地域の宝」。
街全体が、この季節を待ち望み、市民はソワソワウキウキ。
川に柵を設けて、遡上する鮭を捕まえる「ウライ」や、「テンカラ」と呼ばれる三つ又の大きな針が付いた漁具を使う「テンカラ漁」など、
様々な漁法がありますが、最も魅力あふれるのが「居繰網漁」です。
木造りの小さな船3艘で、竿と網を操り遡上する鮭を捕まえていくという、素朴な昔ながらの漁法です。
全く派手さはありませんが、村上の人々の鮭との関係性がよく分かる、村上の象徴だと言えるのではないかと思います。
居繰網漁とは?
居繰網漁は、この地域で江戸時代から続く伝統漁法です。例年10月下旬から11月末までの期間で行われます。
漁の方法としては、2艘の船の間に網を張り、もう1艘の船で水面を叩いて、遡上する鮭を追い込み捕っていきます。
船は全長5mほどの小さな木製。1艘に2人乗り、鮭を驚かさないように手漕ぎです。
1度取材のために乗せてもらいましたが、船が細長いためもあってか、これが揺れるんです。
この上で立ち上がって網を動かし、鮭を船に揚げていくのはなかなか熟練の技が必要です。
漁は決まった時間に行われ、平日と土曜日は朝9:00〜10:30の間。
日曜日は朝9:00〜10:30と13:00〜14:30の間。
その時間の間、船は川を何度も往復し、鮭を捕まえていきます。
ちなみに、見学するならば午前中の方が沢山鮭が捕れるそうなのでおすすめです。
見学をするなら?
居繰網漁の出発は、三面川の鮭産漁協第三ふ化場の眼の前からです。
駐車場もあるので、ここに停めて見学するのがオススメです。
また、対岸には川沿いに道が通っていて、車通りも殆ど無いので、そちら側に回って川岸へ降りるというのもありです。
居繰網漁が行われる辺りの三面川は東西に流れているので、見やすいのは右岸です。
左岸だと逆光になりがちです。その分、印象的な写真が撮れるかもしれません。
多いときには1度の漁で50匹ほど捕れることもあるそうです。
最も漁獲が良いのは、11月半ば〜11月末だということです。
ちなみに捕れた鮭は、鮭産漁協第三ふ化場にある漁協の売り場で直売されます。
例年、オスは2000円前後、メスは2000円〜3000円ほどで買えます。(メスは卵があるために高いのです)
しかし、生魚のために、旅行者には購入が難しいと思います。
というわけで、後ろで紹介しますが、お土産にするなら、干物にした塩引き鮭がおすすめでしょう。
村上と鮭
村上では、鮭には「イヨボヤ」という呼び名があり、地域に人たちとって鮭は特別な存在です。
村上の人々と鮭の関係が特別なものになったのは、そもそも江戸時代。
村上藩の「青砥武平治(あおとぶへいじ)」という武士が、世界で初めて鮭の回帰性に注目し、三面川で鮭の増殖を促進したのがきっかけでした。
これにより、村上藩における鮭の漁獲量が飛躍的に伸び、人々の生活を豊かにしました。
そのため、村上の人たちにとって、鮭は大切に守り育てる存在になったのです。
今も、昔ながらの居繰網漁が守り受け継がれている背景には、そんな村上と鮭の関係が大きく影響していると言えるでしょう。
塩引き鮭
村上では、鮭は頭からシッポまで余すところなく食されます。
その料理法も多彩で、なんと百種類を超えるとも言われています。
そんな鮭料理の中でも最も愛されているのが、塩引き鮭。
たっぷり塩を塗り込められ、日本海の北風に晒された鮭の身は発酵熟成し、深い旨みを味わうことができます。
また、塩引き鮭の製造風景も、村上ならではの絶景の一つです。