芭蕉の世界に浸るなら、夏が(暑いけど)オススメ
通称「山寺」として知られるこのお寺、正しくは宝珠山立石寺と言います。
860年に建立された歴史の古いお寺で、俳句の松尾芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句でも有名です。
体力的には大変ですが、約1000段程の石段を登った先にある、五大堂からの眺めはそれだけの労力を払う価値が有ります。
日本のお寺は山全体に、同じ宗派で幾つものお寺が集まって一つの「霊場」となっているものが多いがおおいのですが、
ここもそんなお寺の一つ。
下から見ると、岩山の木々のなかにお堂が見え隠れしているのが見えます。
お参りというよりは登山です 往復約2時間
まず登山をスタートすると、見えてくるのは根本中堂(こんぽんちゅうどう)。
1356年に初代山形城主・斯波兼頼が再建したものでこの立石寺の本堂です。
この建物、ブナ(どんぐりの一種:日本の森林の豊かさの象徴でもある)の木で建てられた現存する最古の建物で、
国指定重要文化財になっています。
建築様式は入母屋造り(日本の建築においては最も格式が高いとされる造り)。
なかなかに荘厳な雰囲気が漂います。
ちなみにここは海抜258m。
ここを左に抜けて、山門をくぐってあとはひたすら階段を登ることになります。
登り始める前に、売店で「力こんにゃく」を食べましょう。
こんにゃくはカロリーが殆ど無いので、山登りのエネルギー補給になりそうもありませんが、
これはまあ、この「山寺」の定番なので。
—お寺では殺生が禁じられていて、こんにゃくは精進料理としてよく使われる食材なのです。
味は甘辛い醤油味です。
荘厳な雰囲気の中 セミ塚で芭蕉を偲ぶ
まずは山門で入山料300円を払いましょう。
石段はかなり急なので歩きやすい服装、靴が必須です。夏ならば飲み物も持参するのがオススメ。
というか持参してください。
自分の体力と相談しながらゆっくりと登っていきましょう。
所要時間は往復で2時間ほど見たほうがよいと思います。
昇っていく階段沿いには、大きな杉の木がまっすぐに生え、登るごとに岩肌が見え隠れし、
霊域らしい神聖な雰囲気を楽しむことが出来ます。
山門から15分ほど登れば、「せみ塚」が見えてきます。
「せみ塚」は芭蕉の弟子たちが、「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を詠んだ師匠を偲んで立てたもの。
夏の時期なら、耳をすませば「セミの鳴き声が岩に染みる」という世界を実感できるに違いありません。
ちなみに、この俳句僕の個人的な解釈でいうと、
「夏の暑い盛りに、やかましい程に鳴くセミの声さえも、ふと忘れさせてくれるほどの、静謐さを感じさせるお寺」
という感じじゃないかな、と思います。
ここで海抜320m。
いよいよ疲れも吹き飛ぶ「五大堂」の絶景へ
ここからさらに15分ほど登れば、開山堂・五大堂に到着。
岩壁から突き出すように建てられたお堂からは山寺随一の景色を見ることが出来ます。
五大堂は海抜386m
目の前は遮るものがなくパノラマが広がるため、まるで建物自体が浮遊しているような
不思議な感覚を味わうことが出来ます。
肌を撫でる風は、疲れた体を癒やしてくれて、絶景はここまでの努力に報いてくれるに違いありません。
ついに「山寺」のゴール
そしてせっかくココまで来たのなら、あと一踏ん張り、奥の院海抜417mまで登るがオススメです。
五大堂から奥の院までは標高差およそ30m。5分程で登ることが出来ます。
昇った先には、5mの阿弥陀如来を収めた大仏殿と、慈覚大師が中国修行中に持ち歩いていたとされる
釈迦如来と多宝如来が安置されています。
ここでゴール。下りも大変ですが頑張りましょう。
体力的にはなかなか大変な観光地ですが、岩と寺社建築が作り出す空間は一見の価値があると思いますよ。