1300年以上の歴史を経て受け継がれる長良川の鵜飼
長良川は、岐阜県郡上市の大日ヶ岳から三重県の伊勢湾まで流れる「日本三大清流」の一つです。
その長良川で行われている伝統的な漁法が鵜飼。
ちょうど川の中流域である岐阜県岐阜市では、毎年5月11日~10月15日の期間に鵜飼が行われます。
船に乗った鵜匠たちは、首に縄を繋げた鵜を川へ放ち操り、水中で鵜の捕らえた魚を捕獲していきます。
この漁法が鵜飼漁であり、それを間近で見られるのが鵜飼観覧船なんです。
鵜と人間が協力し合って漁をする様子、櫂で船縁をたたく音と鵜匠から鵜に対する「ホウホウ」という励ましの掛け声、
そして煌々と燃える篝火が水面に映し出される様はまるで過去にタイムスリップしたかのよう。
この光景を見るために、年間10万人以上もの観光客が長良川を訪れているんです。
海外からは、イギリスのエドワード8世も過去に鵜飼を観覧したこともあるそうで、今では世界中に知れ渡っています。
そもそも鵜飼いって? 長良川鵜飼の歴史とはじまり
でも、実際、鵜飼い漁はどうやって魚を捕えているんでしょうか?
まず、鵜飼い漁に使う鳥は、ウミウです。
これは、カワウに比べて体が大きく力が強く、さらに我慢強い性格だからだそう。
鵜は喉元を縄で繋がれ、川に潜って捕らえた魚を飲み込めないようになっています。
そして、鵜匠は鵜が吐き出した魚を捕獲。
魚は鵜に捕らわれた時にくちばしで気絶させられるので、鮮度を失わず捕獲されます。
つまり、釣り竿や網を使うよりも新鮮な魚を捕らえる事ができるというわけ。
単純そうな作業に見えて実は、鵜の首を結う紐の加減や結び方が重要で、相当な技術と経験を要するんだそうです。
ちなみに経験を積んだ鵜は、川のどこらへんに魚がいるかを熟知しているのだそう。
鵜匠は鵜の首にからませた縄を鵜や川の状況を察し、巧妙に動かしながら鵜をサポート。
そして、篝火の炎は夜の川を照らして鵜をガイドする役割があるんです。
こうやって、人と鳥が最高のチームワークを組んで魚を捕えてるんです。
鵜飼で獲れる魚は鮎が主です。
鵜飼鮎はかなり貴重であり、ほとんど市場に出る事はなく、地元の料亭や旅館に卸されるそうです。
ちなみに日本で鵜飼が始まった時期は、古墳時代にまでさかのぼり、「古事記」「日本書紀」等に、鵜飼に関しての記録があります。
長良川では7世紀頃から鵜飼いが行われていたと伝えられているそう。
歴史上の人物も愛した鵜飼
例えば岐阜と言えば織田信長ですが、彼も客人をもてなす際に鵜飼を利用していたと記録が残っています。
また徳川家康も、大阪夏の陣の後に岐阜を訪れた際に鵜飼を気に入り、
それをきっかけに、現在も岐阜の名物である鮎鮨は、将軍家に献上されるようになったそうです。
さて、そんな鵜飼いを見るにはどうすればいいのか?
その体験方法をお教えします。
まずは観覧船を予約しよう!
観覧船には乗合船と貸切船があり、開催期間中5月11日~10月15日、鵜飼い休みの一日と川の増水時以外は毎日運行しています。
これらの船は、すべて岐阜市の鵜飼観覧船事務所が一括で運営しています。
予約は、ホームページか電話で可能です。
乗合船の場合、船の定員は約20~30人、出船時間は・18時15分・18時45分・19時15分から選択できます。
船で食事をしたい場合は、鵜飼の開始までに時間の余裕がある18時台に出航する船を選ぶのがおすすめです。
残念ながら、鵜飼いで捕れた魚をその場で食べる事はできませんが、地元の食事処でお弁当を手配して、それを観覧船に持ち込むことはできます。
持ち込み自体は無料です。
日にち限定ですが、観覧船事務所でもお弁当と飲み物、乗船料のセットが有りますので、問い合わせてみてください。
さらに、周辺で宿泊の場合は、宿泊先で食事と観覧船のセットを手配してくれる所もあります。
貸切船の場合は、定員15人~50人の中で利用でき、定員によって金額が変わります。
出船時間は17時30分から可能で、こちらの予約は電話のみです。
鵜飼自体が行われるのは、19時45分~20時30分頃まで。
ちなみに、通常の鵜飼い以外に、御料鵜飼日と呼ばれる、皇室に納める鮎を捕る為の鵜飼もシーズン中8回行われます。
その日は一般の観覧可能な鵜飼開催時間が通常より遅くスタートします。
出船時間は18時45分・19時15分・19時45分、開催時間20時30分~21時30分頃までです。
他には7月~9月の土曜日に一日二回鵜飼が行われる、納涼鵜飼日があります。
これは皇室に納めるための鮎を捕るための鵜飼いですが、一般の方も観覧できます。
1回目乗合船の出船時間は18時15分・18時45分・19時15分から選択し、開催時間19時30分~20時20分頃まで。
2回目乗合船の出船時間は20時40分で開催時間21時10分~22時頃までです。
鵜飼を心行くまで楽しむには?
観覧船に乗らなくても川岸からでも観覧できますが、それでは間近で見る事ができず、やはり迫力に欠けるので、ぜひ観覧船から鵜飼を楽しみましょう。
観覧船は屋根付きの為、雨でも心配いりません。
さらに一部の観覧船は、車いすでも乗船できます。
乗合場から出船し、長良川や金華山の風景を眺めていると船は岸に停泊。
そのまま開始時間まで、食事をゆっくり楽しんだり、船から降りて岸を散策する事もできます。
開始の合図の花火が上がれば、いよいよ鵜飼いがスタート。
まずは狩り下りから始まります。
観覧船は、6隻の鵜舟のうちの1隻と並んで川を下ります。
続いて観覧船だけが停泊し、鵜舟が川を下り鵜飼漁をする様子を見物することになります。
同じ鵜飼でも、鵜匠達の素早い縄さばきの違いを見たり、鵜が魚をどの様に捕らえているか、注意深く比べてみるのも楽しみの一つです。
鵜たちが魚を捕らえたら、鵜匠はタイミングを計り、鵜を舟に上げて魚を吐き出させ、鵜はまた川へと戻って魚を捕らえの繰り返しで、大忙しです。
最後は、鵜舟が川幅に広がって一斉に下って漁をする圧巻の「総がらみ」で締めくくり。
鮎は川上に向かって逃げるため、鵜舟は川幅に広がり川上へ追い込む様に漁をするのです。
全ての鵜舟が横並びになり、鵜匠は魚を脅かす為にドンドンと船縁を棒で叩き、声かけで鵜を励まします。
水面に映る炎が並ぶ様子は情緒たっぷり。
大迫力の伝統的な漁は一見の価値があります。
ちなみに、7月から8月にかけては非常に込み合うので、6月か9月が狙い目。
この時期は気候も涼しく、快適に鵜飼いを観覧できます。
5月と10月ならば、川の上は冷えますので、少し暖かめの服を来ていくといいでしょう。