絶対に行って欲しい 奈良の穴場
奈良県を訪れる時にどこに行こうって考えますか。
東大寺?
大仏、大きいですもんね。すごい迫力です。行くべきです。
興福寺?
五重塔かっこいいですもんね。日本で1番国宝が集まっているお寺ですしね、
再建された中金堂と国宝館も絶対見るべきです。
…で、どうします?
もう京都に帰りますか?
もう少し奈良の町を楽しみたいと思うなら、おすすめの場所が、この依水園。
そんなに時間を取らずに見て回れるし、場所は東大寺と興福寺のちょうど間で、何より美しい。
この美しい庭園をぜひ奈良観光のプランに加えてみてください。
依水園とは?
現在の依水園は、江戸時代に作られた「前園」と、明治時代に作られた「後園」が一つになっているものです。
「前園」は、江戸時代の奈良晒の商人清須美道清が江戸時代前期に作ったものだそうです。
こちらはこぢんまりとしていて、周りの喧騒から離れたひっそりとした庭という趣。
庭の中央に池を配し、その中程に小さな島とそれを通って池を渡る橋がかけられています。
一方の「後園」は広々とした開放感のある庭園。
明治時代の実業家関藤次郎という人物が前園を買い取ったあと、そこに加える形で作ったものだそうです。
作庭をしたのは、茶人である裏千家十二世又妙斎。
遠く東大寺の南大門と、その奥に若草山を借景に望み、庭園の中を散策して楽しむことができます。
1939年に、その庭園を海運業で財を成した中村準策が買い取り、前園と後園を合わせる形で整備し、今に至ります。
前園も後園も素晴らしいのですが、やはりどちらかというと後園の方が見どころも多いです。
というわけで、後園を中心に依水園の魅力を紹介していきたいと思います。
依水園の見どころ
まず依水園の門をくぐった先、左前方にある受付で入場料を払います。
入場料は大人1200円。
併設された寧楽美術館の入館料も含まれています。
ちなみに寧楽美術館には古代中国の青銅器や王羲之の書、高麗青磁なども展示され、こちらも一見の価値があります。
とはいえ、まずは庭園を見に行きましょう。
庭園に入るには、受付で支払いをして振り返った左前方にある瓦屋根の建物の横から。
木戸をくぐると、右側が「前園」左側が「後園」となりますが、順路は「後園」からです。
足元の飛び石に沿って、歩いていきましょう。
左手の建物沿いに歩いて行きます。
瓦葺きの建物を過ぎると、次は茅葺きの建物。これは「氷心亭」と名付けられた建物です。
この時、建物の窓にちょっと注目すると、ガラスが波打っているのがわかると思います。
これは明治時代に作られた、吹きガラスを使っているから。
この建物と庭園が大切に管理されてきたのがわかると思います。
さらに屋根を見ると、なぜか貝殻が。
これはアワビの貝殻で、キラキラ光るために鳥よけの意味があるのだそう。
カラスなどが巣作りのために茅を抜いていってしまうのを防ぐためなんです。
先に進むと建物の途切れた先に広がるのが、いきなりですが、この依水園のハイライトの風景です。
どーんと開けた庭園には、広々とした池と絶妙に配置された木々。
池の向こうには築山。
そのさらに向こうには借景として東大寺の南大門と若草山。
しばらく佇んでいたくなる絶景です。
この風景を部屋から眺められるように配置されているのが、先程の「氷心亭」。
新薬師寺の境内にあった建物の木材を再利用して作られているんだそうです。
ちなみに「氷心亭」ではお抹茶(1000円)を頂くことができます。
絶景を眺めながらの一服は、格別です。
散策すれば風景と音が変わる
回遊式庭園は、散策して楽しめるのが特徴。
後園をぶらぶらと歩いて見て回りましょう。
氷心亭からすぐの池のほとりに大きな庭石があります。
これはかつて、東大寺の塔の礎石に使われていたのだそう。
石の上部に掘られた大きな円は、柱が載っていた名残なのだそうです。
池の真ん中には、島が配されています。
ぜひ渡ってみたいところですが、立入禁止なのでぐっと我慢です。
ちなみに、日本庭園にはところどころ、通路の先に縄で十字に縛られた石が置かれています。
これは「関守石」と言って、「これより先、立入禁止」の印です。憶えておいてください。
依水園を巡る時に注意して欲しいのは水音です。
例えば、氷心亭から順路通り歩いて行き、築山の横に入ると、いつの間にか水音がしなくなっているのに気づくと思います。
そして、築山を回り込むと微かに水の流れる音がしてきます。
その音に誘われるように細い道を下っていくと、池の反対側に出て小さな滝が現れるんです。
そしてその先、飛び石を渡ると水車が。
ここでまた、水の音が変わります。
見た目だけじゃなく、音まで含めて設計されていることを楽しんでください。
もちろん、そんなことは考えずにのんびり散策するのだっておすすめです。
最も美しい季節はいつ?
この依水園の素晴らしいところは、四季折々の花々が植えられ、どの季節に訪れても美しい風景を見ることができるところです。
2月の椿から始まって、梅に桜、ツツジに藤、睡蓮。
秋になればモミジが美しく色づきます。
12月の花が少ない季節には敷松葉で風流を演出してくれます。
とは言え個人的なオススメをあえて言わせていただくとすれば、ベストシーズンは新緑の季節。
つまり5月上旬から下旬にかけて。
花の季節には、それぞれの花だけが咲きますが、新緑の季節の庭園は、すべてが新緑に染まって美しい。
そして、借景である若草山も緑に輝いているからです。
ちなみに依水園は東に向かって開けているので、美しい写真を撮ろうとするなら午後の早い時間がオススメ。
午前中は逆光になってしまうし、午後は影が長く伸びて、手前の池が暗くなってしまうからです。
どうでしょう?
こんなきれいな庭園を見ないで、「東大寺」と「興福寺」だけで奈良の町をわかったような気になっていたらもったいないと思いませんか?
ぜひ依水園を、奈良観光のコースに加えてみてください。