鍛冶職人の町 新潟県三条市
新潟県のほぼ中央に位置する三条市は、おとなりの燕市とならんで金属加工のものづくりで知られた町です。
燕市の方は鍋や釜といった製品、三条市の方は、包丁や鎌などの刃物が中心です。
ともにその技術力は国内外で高い評価を受けているんです。
2009年には、三条鍛冶の卓越した造形技術により生み出される多彩な製品群が、経済産業省の定める伝統的工芸品に指定されました。
ちなみに鍛冶の町の歴史としては、三条の方が古く、市内には236軒もの工房が軒を連ねています。
町を歩けば、そこかしこからガーンガーンというハンマーの音が聞こえて、
家の軒先には、製作途中の金物が置いてあったりして、ここが「職人の街」なんだと実感できます。
そんな鍛冶職人の工房では、一般向けの鍛冶体験も毎日開催されており、気軽に本格的な鍛冶に挑戦でき人気を呼んでいます。
その一つが三条鍛冶を代表する和釘体験!
日本伝統の和釘を作って、それを持ち帰ることができるなんて、最高の旅の思い出になると思いませんか?
そもそも和釘って?
和釘とは、神社仏閣や城などの建設や修理に使われる日本独自に発達した釘です。
現在、一般的に使用されている釘(洋釘)と違い、黒色で太く四角い軸が特徴です。
使用される場所や用途によってさまざまな形のものが作られています。
また、一本一本職人の手で叩いて作られるため、形がそれぞれ違います.
ちなみに下の写真で、左側は巻頭釘(まきがしらくぎ)、右は階折釘(かいおれくぎ)と呼ばれるもの。
巻頭は、打ち込んだ後に頭の部分が潰れて材木にめり込み固定されます。
階折は、先端の曲がった部分が木材にめり込み固定されます。
三条が鍛冶職人の町になった理由とは?
三条の町は、日本有数の大型河川の信濃川と五十嵐川が合流する地点にあります。
中世には、河川を利用して、上流から燃料となる木材を運搬できたこと、
海運によって運ばれてきた鉄を運搬して、鋳物の製造が盛んになりました。
その後、江戸時代に入ると、包丁、小型な、農具、大工道具などの打刃物、
和釘錠前などの建築金物を作る鍛冶職人が活躍するようになったそうです。
いざ和釘作りに挑戦!
和釘づくりを体験できるのは、JR北三条駅から徒歩2、3分ほどの場所にある三条鍛冶道場。
広い駐車場もあり、車でも便利です。
体験は大人1人500円、中学生以下1人250円。
所要時間は約60分です。(2人以上は2時間程度かかる場合あり)
開催時間は、休館日を除く、毎日9:00〜11:00、13:00〜15:30で、この時間内は随時受け付けしています。
4名~9名の場合は1週間前まで、10名~20名の場合は1か月前までに三条鍛冶道場へ予約が必要です。
日本人の場合は、電話予約が基本ですが、外国人の場合はメールでの予約が望ましいそうです。
その場合は、以下の問い合わせフォームからです。
建物の中に入ると、高い天井、巨大なスペースに、大きな電動ハンマーや初めて見るような機械がたくさん設置されています。
炉の熱のせいか、少し熱気を感じます。
鍛冶道場で使用する炉のひとつ、コークス炉はなんと1,500℃もの高温になるそうです!
体験講座をご指導下さるのは、地元のベテラン鍛冶職人のみなさん。
厳しく…いえ、優しく手取り足取り教えて下さいますよ。
まずは職人さんのお手本から。
コークス炉で熱した材料の鉄の角材を金槌で打っていきます。
すると、ただの鉄の棒が魔法の如く、あっという間に美しい和釘に…
次に体験者が挑戦。
同じように鉄を打つのですが、これがなかなか難しい!
ゆがませないためには、まっすぐ腕を振りおろすのがコツということですが、金槌が言うことを聞いてくれません。
思い切って鎚を振り下ろしますが、釘のようになかなか尖らず、なぜかどんどん細長く伸びていきます…
職人さんたちのアドバイスとフォローを受けながら、四苦八苦の末、なんとか釘の形に。
これを水で冷やして焼きを入れたら完成。
感動です。
日本各地に体験コーナーは色々ありますが、ここまで本格的にやらせてもらえるのは他にはないように思います。
鉄を自分の一部のように扱う職人さんがとてもかっこよく見えました。
大満足の和釘作りのあとは、施設に見本陳列された美しい鍛冶工芸品の数々を見て回ることもできます。
また、気に入った作品は購入することもできるのでお土産探しにも便利です。
日本独特の工芸品、和釘を作る本格的な体験。
他とはちょっと違う日本を体験したい、そんな人におすすめです。