気分はまるでタイムスリップ!ベンガラ色に染まるレトロかわいい町並み
緑が青々と茂る岡山県ののどかな山間にある吹屋地区は、ベンガラ製造によって莫大な財を築いた豪商たちによって作られた町です。
家々がベンガラの赤銅色に染まる様はなんとも美しく、レトロ&ノスタルジックな雰囲気が楽しめます。
写真提供:岡山観光連盟
そもそもベンガラってなに?
「弁柄」や「紅殻」とも呼ばれるベンガラは、赤銅色の顔料です。
赤鉄鉱として産出する酸化鉄が原料で、インドのベンガル地方で産出したことが語源の由来になっています。
その歴史は古く、なんと旧石器時代の壁画でも使われていたとか!
最古の顔料とも呼ばれるベンガラは、日本の暮らしにも古くから根付いています。
歴史を遡れば、縄文時代の土器の赤色彩色がベンガラだったという記録もあるほど。
ベンガラは経年変化に強く、褪色も緩やかなため、長く鮮やかな色合いが楽しめます。
防虫・防腐作用や防錆作用もあることから、漆器や焼き物、家屋などに広く使われてきました。
ベンガラ色の町並みが生まれた理由
吹屋地区は、もともとは鉱山の開発によって形成された町です。
その後、江戸中期(1707年)には、銅採掘の副産物(捨石)から得た磁硫化鉄鉱石を原料に、日本で初めてベンガラ製造が行われ、
以来「ベンガラの町」として大正時代まで繁栄を極めました。
吹屋のベンガラは鮮やかで美しい仕上がりになると評判で、陶器や漆器の塗料として高値で取引されていたそうです。
その品質は、現代の化学製法をもってしても「色は吹屋ベンガラには及ばない」と言われるほど良質なものでした。
江戸時代後期、ベンガラ製造で莫大な富を得た旦那衆は、“豪華な屋敷”で財力を誇示せず、
「町全体をベンガラ色に染める」というコンセプトのもと、一から町を作り上げました。
現代でいうところの「都市デザイン計画」が江戸時代に行われていたのです。
当時としてはとても先進的な試みだったことでしょう。
吹屋地区の家屋は、石州(現在の島根県)から招いた宮大工や瓦職人たちによって建てられました。
赤銅色の石州瓦を敷き詰めた屋根に、紅殻格子、ベンガラ色の漆喰壁、
そして美しい意匠を散りばめた柱や扉などから、当時の職人たちの確かな仕事ぶりが窺えます。
赤色の家屋と空、緑のコントラストが美しいベンガラの町を散策!
全長1.5kmほどの通りには、当時の面影を色濃く残す建物がずらり!
ベンガラで財を成した豪商たちが作り上げた美しい街並みは、1977年に国の重要伝統的建造物群保存地区に認定されています。
この赤い町は映画の撮影にも度々使われるだけあり、赤壁に白壁が交じる町並みの中を歩いていると、
どこか不思議な世界に迷い込んだような気持ちになります。
それに、少し見上げてみると、妻入りと平入りの屋根がリズミカルに並ぶ姿がなんだか楽しく、
家紋入りの鬼瓦はそれぞれ特長があって、家ごとに見比べるのも面白いんです!
明治時代に開局したという郵便局も、いい趣。
たまにはメールやアプリなんかじゃなくて、手紙を書いてみたくなります。
町をぶらりと歩けば、吹屋地区が栄えた時代の人々の息遣いが今にも聞こえてきそうな家並みと、
そこに流れる穏やかな時間に浸ることができます。
ちなみに、こちらの地区の家には一般住民の方が今も暮らしています。
マナーを守って散策しましょう。
町の中には、家並みだけじゃなくて、さまざまな観光スポットもあります。
その中から、少しだけご紹介します。
吹屋案内所 下町ふらっと
お土産屋さん・体験施設です。
ベンガラ染めの商品を購入できるだけでなく、ここではお土産にもピッタリなベンガラの染色体験が楽しめます。
型紙を使ってコースターやハンカチ、Tシャツなどを染めるベンガラ型染めは800円~。
ベンガラ液に浸して手ぬぐいやストールを染める泥染めは2500円~。
自分だけのオリジナルアイテムを作って旅の思い出にするのもよさそうです。
こちらは営業時間が11:00~16:00です。
国の重要文化財「旧片山家住宅」
こちらは歴史的な建造物です。
宝暦9年(1759)の創業以来、200年以上もベンガラの製造や販売を手掛けてきた老舗。
銘木をぜいたくに使った座敷や精巧な欄間など、随所に施された精巧な意匠にも注目して見ると面白いでしょう。
主屋の奥にはベンガラ製造に関わる付属屋が連なり、当時の作業の様子を表した資料が多く展示されています。
入館料は大人500円(向かいに佇む郷土館とセット)
「郷土館」
旧片山家住宅の向かいにあります。
郷土館はベンガラの窯元・片山浅次郎家の総支配人、片山嘉吉氏の分家です。
内部には隠し戸棚やからくり戸、さらには隠し部屋や隠し廊下もあり、さながら忍者屋敷のような仕掛けが施されています。
気軽に探検気分が味わえる「笹畝坑道」
「吹屋ふるさと村」から徒歩約15分の場所にある「笹畝坑道」は、
ベンガラの原料となる磁硫鉄鉱が採掘されていた「吉岡(吹屋)銅山」の坑道です。
江戸時代から大正時代まで、実際に使用されていた銅山を復元して内部を見学できるようにした坑道で、こちらも人気スポットの一つ。
通路が狭いので頭上には注意して巡ってください。
(入館料大人400円)
ベンガラについてもっと学びたくなったら「ベンガラ館へ」!
江戸中期から大正時代まで、吹屋を大いに賑わせてきたベンガラ産業の歴史は、1972年の銅山閉山にともない、1974年に幕を閉じました。
ここ「ベンガラ館」は、明治ごろのベンガラ工場を当時の姿に復元した施設です。
当時、人々がどのようにしてベンガラを作っていたか、その作業風景が学べるようになっています。
(入館料大人300円)
ちなみに・・・
小泉銅山とローハ(硫酸鉄)の製造で莫大な富を築いた庄屋・広兼氏の城郭のような邸宅「広兼邸」も必見!
いろいろ見て回りたい人は、
「旧片山家住宅」「郷土館」「笹畝坑道」「ベンガラ館」「広兼邸」の5箇所を見学できる周遊チケット(大人1000円)がオススメです!
このチケットは、対象の施設の窓口で買うことができます。
赤色に彩られた建物がずらりと並ぶ様子は、他では決して見られない光景です。
古き良き時代の面影が残るレトロな町並みを散策してみませんか?