ウポポイとは?
ウポポイとは、2020年7月に北海道白老町にオープンした、
北海道を中心とする北日本に暮らしてきた先住民アイヌ民族の文化を伝承するために作られた施設です。
アイヌ語で「(大勢で)歌うこと」を意味します。
※ 画像はイメージです
現在、アイヌ文化は伝承者が減少していることなどにより、その振興や普及啓発はおろか、アイヌ語、伝統工芸などの伝承の危機にあります。
また、日本国内ではアイヌの歴史や文化等について十分な理解が得られていません。
ここウポポイ(民族共生象徴空間)は、
アイヌの歴史・文化を学び伝えるナショナルセンターとして、2020年にオープンしました。
長い歴史と自然の中で培われてきたアイヌ文化を、さまざまな角度から伝承・共有するとともに、
国内外、世代を問わず、アイヌの世界観、自然観等を学ぶことができるよう作られた施設です。
ウポポイまでのアクセスは?
最寄りの駅はJR室蘭本線の白老駅です。
白老駅北口から出て右に、道なりに進み1つ目の分かれ道を右に進むと正面にウポポイが見えてきます。
駅から約500m、徒歩で10分ほどの道のりです。
(バス、電車、車でのアクセス詳細は、補足情報をご参照ください)
車の場合、駐車場は園内駐車場(普通車第1駐車場 246台、二輪10台)と園外駐車場(普通車第2駐車場 311台、自転車駐輪場、大型バス駐車場)が用意されています。
入口~エントランスは無料エリア
ウポポイは、国立アイヌ民族博物館をはじめとする有料ゾーンと、入り口付近の無料ゾーンに分かれています。
入口を入ってすぐのエリアは無料ゾーンで、散歩がてらに誰でも利用することができます。
入り口で、まず皆さんを出迎えてくれるのは通称「いざないの回廊」。
高さ2mほどのコンクリートの壁で作られた回廊に、森の風景と北海道の野生の動物たちの姿が描かれています。
深い森の中に迷い込んだような、野生動物がすぐそばにいるような回廊を抜け、いよいよアイヌ文化を体験する空間へと向かいます。
回廊を抜けると「歓迎の広場」に出ます。
ここには、白老町の社会福祉法人が運営する人気カフェ「スイーツカフェ ななかまどイレンカ」と「Café RIMSE(カフェ リムセ)」の2つのカフェがあります。
どちらも地元の食材を生かした軽食やお土産が自慢。
なかでも、ななかまどイレンカの「パピリカパイ」(380円)は絶品!
壮瞥産のりんごにカスタードクリームを合わせた自家製アップルパイで、サクサク食感とそのボリュームに驚きますよ。
歓迎の広場の奥にあるのが円形のエントランス棟。
ここまでは無料ゾーンです。
エントランス棟には、国立アイヌ民族博物館に向かって右手にショップ・トイレ・インフォメーション、左手にフードコートとレストラン、チケット売り場があります。
2店舗あるレストランでは、アイヌ料理によく使われる食材を使用したお料理を楽しむことができます。
さていよいよ有料ゾーンへと入っていきましょう!
ウポポイには何があるの?
ウポポイの有料ゾーンは、大きく国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園の2つに分かれています。
「国立アイヌ民族博物館」
国立アイヌ民族博物館は、多くの人にアイヌの歴史や文化を伝え、アイヌ文化を未来につなげていくために設立された施設です。
資料や展示などでアイヌ文化への理解を深める事ができます。
エントランスロビーの右手にある96席の「シアター」では、
「アイヌの歴史と文化」「世界が注目したアイヌの技」という2つのプログラムを交互に上演しています。
それぞれ約20分です。
また、展示室には、基本展示室と特別展示室があります。
基本展示室は常設展示で、「ことば」「くらし」といった6つの大テーマについてアイヌの視点から紹介しています。
特別展示室は、時期ごとにテーマが変わります。
また、「ライブラリ」には、アイヌ文化と歴史を知るための書籍として、専門的な学術書、世界の先住民族についての本、
絵本や写真集、図鑑などが収蔵されています。
(ライブラリ内の閲覧のみ可能で貸出はできません)
「国立民族共生公園」
国立民族共生公園は、自然の中で培われてきた先住民族アイヌの文化を五感で感じることができる体験型フィールドミュージアムです。
アイヌ古式舞踊の上演や伝統芸能体験、食文化体験や伝統工芸品の製作体験等を通じてアイヌ文化を体感することができます。
以下でざっとご紹介します。
「体験交流ホール」では、短編映像、伝統芸能など、アイヌの文化を視覚的に体感することができます。
「体験学習館」では、アイヌの代表的な楽器「ムックリ」と「トンコリ」の演奏鑑賞や、アイヌに伝わる物語の紹介や、アイヌ語版の紙人形劇を鑑賞できます。
また、アイヌとつながりの深い動物(※カムイ)が見ている世界を上下左右180度の広角映像で体験できるドーム型スクリーン映像体験などのプログラムが用意されています。
※カムイとは、アイヌの人たちにとっての霊的存在です。日常生活で自分の周りに存在する動植物、自然など様々なものに宿ります。
「チキサニ広場 屋外ステージ」では、各地に伝わる伝統舞踊、鶴の踊り、弓の踊り、楽器の演奏などアイヌの芸能を鑑賞することができます。
(※夏季限定です)
「工房」では彫る、切る、削る、刳(く)る、曲げるといった男性の手仕事、
織り、縫い、編みといった女性の手仕事の伝統技法実演を通してアイヌ工芸の魅力を感じることができます。
「伝統的コタン」とは、アイヌの人々が実際暮らした集落を再現したエリア。
チセと呼ばれる家屋の内部見学や狩猟用の仕掛け弓実演・解説、丸木舟操舟実演・解説など、実際のアイヌの暮らしを目にすることができます。
いかがですか?
本当に、多彩な展示があり、しかもさまざまなイベントが次々行われているので、どれを見るのか本当に悩ましいです。
とても1日だけではすべて見て回るのは不可能。
というわけで、実際の体験を元に、これだけは見て欲しい!というオススメをご紹介します。
ウポポイで見逃せないのはコレ
まずは「国立アイヌ民族博物館」から。
ここでは、ことば・世界・くらし・歴史・しごと・交流の6つのテーマからアイヌ民族の歴史や文化などが紹介されています。
こちらでぜひご覧いただきたいのが、この靴です。
何で作られているかわかりますか?
正解は「鮭の皮」です。
アイヌ民族は、カムイとともに生きながら同じ命を持つすべてのものに敬意を持ち、感謝の気持ちを忘れません。
鮭の命をいただく際も同様です。
身だけでなく皮まで無駄にすることなく、ありがたく頂戴します。
この靴は、そんなアイヌ民族の命に対する敬意があらわれた貴重な展示です。
また、独自の文化を作ってきたアイヌ民族が、周囲の人々や社会とつながろうと行ったのが交易です。
その際に、さまざまな工芸品が作られ、非常に繊細で美しい紋様や技術が生まれました。
そのアイヌ民族の文化が現代まで受け継がれている様子は、現代作家による工芸品の展示で感じることができます。
素晴らしい作品をぜひ、ご覧ください。
「アイヌの暮らしと文化解説 コタンの語り」
ここで必見なのは、最後に行なわれる迫力満点の「アイヌ古式舞踊」。
アイヌ民族は、祈る、感謝する、悲しみや悪を払う際に必ずカムイとともに踊ります。
私は、この演舞を観て、生活の中心に祈りや踊りがあるアイヌ民族の「思いの強さ」を感じました。
自分に関わる人やものに感謝し、生きていること自体を「あたりまえ」と感じていないんです。
自然の命をいただきながら、周りの人に助けられながら、カムイに守られながら「生かされている」という感謝の想いがひしひしと伝わる演舞でした。
「ポロチセ見学」
こちらでも、アイヌの語り部による「語り」を聞くことができました。
部屋の中央には囲炉裏があり、その火にはアイヌ民族にとって一番身近な「アペフチカムイ」というカムイが宿っていて、
他のカムイとの間を取り持つ役目を持っているそうです。
家族はこの火を囲み、食事や仕事をしたり、語りあったりします。
博物館でアイヌ民族の生活を学んでからここを訪れれば、この囲炉裏を前に座った時、囲炉裏を囲むアイヌの家族の姿が見えてくるはずです。
今日も一日、家族が無事で過ごせたことに感謝し、にこやかにありがたく食事をする風景です。
夜は、就寝までどんな風に過ごしたんでしょうか?
手仕事をしていたのか、子供たちと遊んだのか…アイヌ民族の生活のすべてが知りたくなる、そんな空間です。
1度は訪れてアイヌ文化に触れてほしい
「ウポポイ」はアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味し、
「民族共生象徴」には、「先住民族の尊厳を尊重し差別のない多様な文化を持つ活力ある社会を築いていくための象徴」という意義が込められています。
多様な価値観があるからこそ、社会は豊かな文化を育てることができます。
カムイとの関係を築きながら生活をしてきたアイヌ民族の文化。
その文化の理解を深めるとともに、その視点から自分の自然との向き合い方を振り返った時、生き方の新たな発見があるかもしれません。