11月から3月が天日干しの最盛期
香川県小豆島では冬になると、風に揺れる繊細な白いカーテンが現れます。
その正体は、小豆島で400年前から続く、手延素麺づくりのハイライト。
太陽の光を浴びて、白さと美味しさを増す繊細なそうめんは、見ているだけで時間が立つのを忘れるほどです。
小豆島の中心、池田地区にある「マルカツ製麺所」は、明治時代から続く素麺づくりの家。
現在のご主人は6代目で、先代のお母さんとご主人、社員2人の合計4人で丁寧に手作りの素麺を作っています。
瀬戸内海の美しい島 小豆島
瀬戸内海に浮かぶ小豆島はオリーブの特産地として知られています。
その生産量はなんと、日本の9割ほど。
広さは、約170キロ平方メートル。瀬戸内海で2番めの大きさです。
©(一社)小豆島観光協会
人口はおよそ2万8千人。
岡山の新岡山港からフェリーで約70分。 四国の高松港からフェリーで約60分。
高速艇で35分の位置にあります。
他にも、寒霞渓の紅葉や
©(一社)小豆島観光協会
1日に2度、島との間に現れる砂の道、エンジェルロード、
©(一社)小豆島観光協会
醤の郷の風情ある町並みなど多彩な観光資源を持つ島ですが、冬の時期におすすめしたいのが「そうめんづくりの風景」です。
小豆島手延そうめんとは
日本には、3大そうめんというものがあります。
奈良県の三輪そうめん、兵庫県の播州そうめん、さらに今回紹介する香川県の小豆島そうめんです。
ちなみにそうめんというのは、小麦粉を使った麺。
同じ小麦粉を使った麺でも、うどんは、生地を捏ねたものを伸ばして切って麺の形にしています。
一方、そうめんは小麦粉の生地を細く細く伸ばすことで麺に仕上げているんです。
小豆島そうめんの歴史は、約400年前にまで遡れます。
なんでも伊勢神宮にお参りに行った小豆島の住民が、途中で通りかかった三輪そうめんを気に入り、その製法を持ち帰ったのがきっかけなんだそう。
島伝統の素麺づくり
マルカツ製麺所での素麺づくりは、朝5時に始まります。
まず最初は生地作りから。小麦粉と食塩水を混ぜて作っていきます。
天候や気温で塩加減を調整するのが職人技。
生地を約10cmの厚さにし、折り曲げながら5〜6回伸ばしていきます。
つまり1本の素麺は、10〜12本の生地が束になったもの。これが小豆島手延素麺のコシの秘密。
その後、小豆島特産のゴマ油を塗りながら直径2cmほどの棒状にしていきます。
この工程で平らな生地が丸い筒状になっていきます。
これを自動巻き機にかけ、さらに細くしながらヨリをかけていきます。
この時点で細さは約4mm。
これを2本の竿に八の字状にして折り返しながらかけ2時間ほど熟成させたあと、今度は50cmで引き延ばし、再び熟成させます。
そのあと、干木(乾燥台)にかけ、細く延ばしていきます。
この段階で細さは0.8mm。
そして、およそ1時間ほど建物の中で陰干ししたところで、外へと出し天日干しへ。
天日干しの狙いは、麺を陽の光と風に当てること。
陽の光によって、麺が漂白され白くなり、また旨味が増すのだそう。
また、風に当てることで麺の乾燥が進むのだそうです。
太陽と風に満遍なく麺が当たるように乾燥台の向きを変え、風で乾燥が進みすぎると麺が切れてしまうので、麺の張りを緩め、
干す時間は30分間から1時間ほどですが、せわしなく麺の世話をしながらの作業です。
この天日干しされている素麺がとてもきれいなんです。
繊細な素麺が、風にサラサラ揺れる様子は、音もなく揺れているのに、なぜか音が聞こえてくるように感じます。
天日干しが終われば、屋内で2時間ほど乾燥させれば完成。
長さ19cmに切って束にしていきます。
購入するには?
このように手間暇かけてた素麺だからこそ、コンビニやスーパーで売っているお値段低めのものとはものとは違って、38束で2,980円
と倍以上の値段になっています。
でもその分味も絶品。
そんじょそこらの素麺とは違う、シコシコの歯ごたえと、ツルンツルンののどごし、そして旨味のある素麺を味わうことができます。
はっきり言って、素麺の概念が変わると思います。
これまで食べてきた素麺は何だったんだ!?と思うことでしょう。
幻の生そうめん
こちらのマルカツ製麺所のそうめんで、ぜひ食べてもらいたいのは、「生そうめん」。
素麺といえば乾麺と思うかもしれません。
生そうめんは、その名の通り乾燥させる前の生の素麺のこと。
素麺生産者が、毎日麺の出来を確認するためにお昼ごはんに賄いとして食べていたものなんです。
乾燥していないので日持ちはせず、これまでは外部の人は食べられないものでした。
しかし、マルカツ製麺所では包装などを工夫して、通販を可能にしたんです。
僕も、製麺所にお邪魔した際にごちそうになったんですが、食べてみるとシコシコのツルツルで、モッチモチ。
そして、小麦粉の香りがとても香ばしくて、これまでに体験したことのない美味しさでした。
素麺の概念が変わると言っても過言ではありません。
ぜひ小豆島の美しい素麺の風景とともに、島の名物、小豆島そうめんを味わってみてください。
見学する上での注意点
マルカツ製麺所を始め、小豆島の素麺生産者の多くは、家族でこぢんまりと作っています。
見学をすることは可能ですが、作業の邪魔をしないようにしてください。
ちなみに、島内では他にも
キッチンUCHINKUでは、マルカツ製麺所のそうめんがグリーンカレーヌードルとしてランチで食べられるそうですよ。